【潰れたくても潰れることができない会社になる】

 以前にも触れましたが、黒字を継続することができる会社―――良い会社は、自社の利益を追い求めるだけの存在ではありません。自社を取り巻く関係者と一緒になって、成長し、勝っていくことができる企業です。

 そんな企業は、周囲の企業と緊密なネットワークの中に埋め込まれています。仕入先や販売先がいい仕事をしてくれるから、自社が繁栄する、という因果関係はもちろんありますが、同様に、自社がいい仕事をするから仕入先や販売先がいい仕事ができるという望ましい関係です。

 そうしたネットワークができたときに、自社が、「後継者がいないから」という理由、あるいは「経営がしんどくなってきたから」という理由で廃業すると言い出したらどうなるでしょうか。自社だけでなく、関わる全ての人が大きな影響を受けます。端的に言えば、損をします。

 伝統がある老舗企業は、何度も会社を畳むような危機を乗り越えています。しかし、それは必ずしも、経営者が自分のために選んだ道ではありません。会社を畳んで、廃業した方が短期的には得になるような状況でも、すでに多くの人を巻き込んでしまった状況だから、逃げることが許されないのです。つまり、潰れたくても潰れることができないくらい、周囲の会社との関係に深く埋め込まれているのです。そうした会社になることは、経営者の地道な努力を必要としますし、責任感も求められます。ただ、その見返りは決して小さくないのです。